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【絵本】1000の風 1000のチェロ~チェロの音色を絵で魅せてくれる

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1000の風 1000のチェロ

いせひでこ・作
偕成社
2000年11月 初版第1刷

あらすじ

ひとりの男の子、彼と同じ音楽教室に来ている女の子、そして、なかよくなったおじいさん。

3人の共通点はチェロを演奏するということ。

そしてチェロを弾くとき、それぞれの思いがあふれだすこと。

チェロの音が犬の鳴き声みたいだったり、弾き方がおこっているみたいだったり。

飼っていた犬、かわいがっていた小鳥たち、長い年月を共にした友。

かけがえのないものを失った彼ら。

弾き方がおこっているみたい

でもぼくより難しい曲を弾いているあの子は神戸からやって来たんだ

震災の後は体育館やテントで暮らしてたって。

フロル、ピノ、ミント みんな焼け野原の空にかえしてあげた

みんなどうしているんだろう? 今も元気でいるかな?

ある日、二人はが出会ったのはチェロを抱えたたくさんの人々。

みんなが行く先に吸い込まれるように入っていくと

大震災復興支援コンサートの練習会場だった

女の子はすぐに参加の申し込みをして、配られた楽譜の練習をはじめてる

ぼくもチェロを取り出していた

そこで仲良くなったおじいさんは

そんなに頑張っておとをだそうとしなくていいんだよ

みんなのおとをきいて きもちがひとつになるように、かんじながらひくんだ

と教えてくれた。

おじいさんのチェロは60年来の友人のだった。

震災で亡くなってしまった友人の姿にチェロの音を重ねながら演奏するおじいさん。

おじいさんとおんなのこと僕は公園でれんしゅうをつづけた

あんたの音、いぬのなきごえじゃなくなったね

女の子の弾き方もやさしくなった

グレイのことを思って引く男の子

フロルのことを思って引く女の子

友人のことを思って引くおじいさん

コンサートの参加者は1000人以上にふくらんだ

チェロを抱く奏者はみんな自分の影を抱いているように見えた

よせてはかえす波のような弓

かぜになって吹き抜けるチェロの音

年齢も性別も国籍もばらばらの人々がこころをかさねて奏でる音

こころはひとつにできる

きもちはかさねあえる

その音は風に乗って新しいあしたへ流れていく



レビュー

阪神淡路大震災の翌年、1998年11月29日、1014人のプロとアマチュアのチェロ奏者が集まった。神戸で開催された第1回1000人のチェロコンサート。

そのコンサートをモチーフに描かれた作品で、当時、作者もチェロ奏者として参加された中から生まれた物語。

流れるような鉛筆の線で描かれる人々。
背後から腕を回し、片手で楽器の中心を、もう片方の手で周りから抱えるように楽器を支え、全身を使ってチェロを演奏している。
大きく腕を左右に動かし、頭をゆすり、髪をなびかせて、
時に強く、ときにやさしく。
うっすらと淡く、透明感のある色が、彼らの動きに温かみとやさしさを添える。
チェロの心地よい音色が聞こえてくるようだ。

1000人を超える参加者は、それぞれが様々な心や感情を音に乗せて表現する。
そこに加わった少年と少女も、無意識のうちに悲しみを奏でている。
そんな彼らが、チェロを通して心を通わせるうちに、だんだんと二人のチェロの音色が変わっていく。その変化にお互いが気付くシーンがとても好きだ。

私はチェロは演奏したことがないけれど、別の楽器を演奏した経験があるからよくわかるのだが、同じ楽器でも、その時の気持ちによって全く違った音が出る。イラつくときにはとげとげしい音、楽しい時には弾むような音、悲しい時は泣きだしそうな音。

1000を超える参加者が集まったという復興支援コンサート。

新しいあしたを願って奏でられた1000の音は、どんな音だったんだろう。

淡い色彩、流れるような線で描かれる人物や風景は、ふんわりとさわやかなやさしい風を届けてくれる。悲しみや痛みが、人と人のふれあいによって次第に薄れ、冷たい指先がゆっくりと温まるように、心があったかくなる。
この絵本は震災を知らない子供たちにもずっと読み継がれてほしいと思った。

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