『うちのねこ』ってどんな本?
高橋和枝 作
アリス館
2021年7月20日 初版発行
野良猫だったうちのねこ
うちにねこがやってきました。
野良猫だったところを保護されたねこです。
最初は「わたし」が近寄ることもできないくらい警戒心をむき出しにしていたねこ。
そんなねこを「わたし」は遠くからそっと見守りながら、いっしょに暮らし始めます。
最初はソファの下に隠れて、でてこない。
かたくなに心を閉ざしてしまったねこ。
でも、いっしょに暮らし始めてひと月がたった頃、やっとソファーの下から出てきてくれた。
ホッとした「わたし」がそばに寄ろうとしたら…
全身の毛を逆立ててうなり声をあげたねこ。
こわくないよ、
だいじょうぶだよ、
おいでおいで、
「わたし」のことばが
ゆっくりゆっくりねこにとどき始めた
そう思ったのに…
ホントにこの子はうちのねこになれる?
あせっちゃダメ、少しずつ、ゆっくりゆっくり、
ねこに心をよせていこうとする「わたし」
怖くてたまらない、でも、もしかしたらこの子は大丈夫なのかな?
そんなそぶりを見せる「うちのねこ」
ふたりが心を通わせて、「うちのねこ」が本当のうちのねこになるまでの道のりを描いた一冊です。
感想~うちのねこ
表紙のねこ、どことなく不安そうな目で振り返る姿が気になりました。
その不安げな目に見つめられ、思わず本を手に取りました。
かわいいねこを描いた作品じゃないかもしれない
そんな予想が大当たりでした。
この本には「わたし」とねこのありのまま日々がやさしい言葉でつづられています。
心を閉ざしてしまったねこといっしょに暮らすことの難しさ、
撫でることはおろか、近寄ることさえ拒否される日々。
たいへんだったろうな、と思います。
でも、きっとそれ以上にねこがかわいくて大好きなんだって気持ちが
優しいタッチの絵と言葉にこめられているのです。
もう、こわがらなくてもいいんだよ
そんな声をかけたくなります。
読後は「わたし」のやさしさに心を開くことができたねこに、ホッと胸をなでおろしました。
このところのねこブームで、ねこの可愛さばかりがもてはやされていますが、その裏で、かわいがってもらえずに捨てられたネコもたくさんいるのが現実です。
ねこを飼うということは、家族として一緒に暮らすということ。
ねこに限らず、どんないきものにも当てはまることです。
彼らを家族として迎え入れたなら、
いい時も悪い時も、
どんな時でも丸ごと引き受けて、
いっしょに乗り越えていく
そんな覚悟をもって飼い主になってほしいと強く思いました。
著者紹介
高橋和枝
1971年神奈川県生まれ。教育学部の美術科で日本画を学び、文具デザインの仕事を経て、書籍の挿画や絵本創作に携わる。著書に『くまくまちゃん』(ポプラ社)、『りすでんわ』(白泉社)、『くまのこのとしこし』『トコトコバス』(講談社)、『あめのひのくまちゃん』(アリス館)、『あら、そんなの! 』(偕成社)など。絵を手がけた本に『あ、あ! 』(ねこしおり・文/偕成社)、『月夜とめがね』(小川未明・作/あすなろ書房)などがある。
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