『よるくま』ってどんな本?
酒井 駒子 作・絵
偕成社
1999年10月 1版1刷発行
ぼくがベッドで眠るまえ、ママにお話をはじめます。
何のお話かというと
昨日の夜にやってきたともだち「よるくま」のこと。
ママにお話をしてもらうのではなく、ぼくからママにお話をしてあげるスタイル。
ママ、あのね…と会話調ではじまる書き出しに、
なになに?どうしたの?と引き込まれます。
そのおはなしは
大好きな人への気持ちがたくさんつまった
ふんわり、あったかな毛布にくるまれているような
そんなやさしさがあふれています。
昨日の夜、ぼくのところにやってきたかわいい友だち。
夜の暗闇のように真っ黒で、胸にお月さまのような白い模様がついているくまのこ
そのこの名前は、よるくま。
だきしめてみたらかわいくて、すぐになかよしになっちゃった。
よるくまはどうしてぼくのところにきたのかな?
それは、だれかをさがしていたから。
よるくまはぼくの手を引いて、家から連れ出します。
よるくまがさがしているのは
大好きなおかあさん。
いったいどこにいっちゃったんでしょう?
あっちに行ったり、こっちを見たり。
お店に買い物にいったのかな?
それとも、いつもの公園にいるのかも。
こころあたりの場所はさがしてみたけど
…
おかあさん、はやく出てきてよ!
『よるくま』の絵は夜の暗闇のなかにパーっと広がる明るさが対照的。
スポットライトのように使われている、あかるくて優しい黄色が印象的です。
心細さが伝ってきて、思わずほろり
ストーリーに戻りましょう。
よるくまのお母さんは、どこをさがしても見つかりません。
どんどん心細くなるよるくま。
とうとうよるくまの目から涙がこぼれてくるシーンは
思わずこちらもほろりときます。
でもご安心を。
ちゃんとお母さんはいましたよ。
どこにいたかは
ひみつにしておきましょう。
おおきくてあったかいお母さんの胸に
ぎゅーっと抱きしめられて
うれしそうなよるくま、そしてぼく。
きっと、絵本の前のあなたも
お母さんのあったかさを感じることができるはずです。
よるくまの姿が娘に重なりました
よるくまのお母さんは、働くママを連想させます。
実は、よるくまがみつけたときのお母さんは、あるお仕事中なんです。
私自身、行っちゃヤダ~と泣き叫ぶ我が子を先生の手に預けて保育園を後にし、
後ろ髪を引かれる思いで仕事に向かった経験があります。
よるくまのつぶらな瞳、
さがしても、さがしても、大好きなお母さんが見つからない。
お母さんを探すよるくまの姿に、我が子が重なって、思わず涙がほろりとこぼれます。
お母さんを見つけたふたり。
あらあら、どうしたの?
って、こどもたちを胸に抱くお母さんに救われました。
お母さんのあったかさ
こどものあったかさ
外で働くママも
外で働いていないママも、
ママにはやらなきゃいけないことがたくさんあって、忙しいんですよね。
あれこれ忙しくて、子どものことをわずらわしく感じることが私もよくありました。
で、
そんなとき、
よるくまを夜寝る前に一人で読んでみてください。
明日はちょっとやさしくなろうかな、って思えるんじゃないかと思います。
(もちろん、お子さんといっしょに読んでくださっても大歓迎ですよ)
わたしの場合、もうすっかり大きくなってしまったけど、
子どもたちをぎゅーって抱きしめたときの
あのぬくもりを思い出して、
読み返すたびに胸の奥がほっこりします。
作者について
酒井 駒子
1966年生まれ、東京芸術大学美術学部卒業。
絵本作家。
2005年、『金曜日の砂糖ちゃん』(偕成社)により第20回ブラティスラヴァ世界絵本原画展金牌を受賞。
『リコちゃんのおうち』『赤い蝋燭と人魚』(ともに偕成社)
『よるくま くりすますのまえのよる』(白泉社)等の作品がある。
(本書著者紹介より引用しました)