絵巻絵本 びっくり水族館
長 新太 作
こぐま社
1990年年11月5日 第1刷発行
みなさま、こちらの表紙をご覧ください。
地面に大きな口を開いた魚がいます。
その魚の口がこの水族館の入り口です。
前の人を押さないように、並んで、ゆっくり入ってくださいね。
中に入ると、ちょっと変わった魚や水の生き物がいます。
ひげのはえたウオ、
近所のおじさんみたいなジュゴン、
パンツをはいて泳ぐイカの群れ、
そうかと思えばうっとりすようなクラゲの美しいバレエのパフォーマンスもみれますよ。
展示されているだけでは物足りなくなった生き物たちは、お客さんのそばに来てくれます。
クツをはいているサメが、族館の床の上を歩いていたり、
でっかいフグが水槽を飛び出してきたり、
トビウオがねぐらへ帰るカラスのように空中を飛んでいたり
こんな変わった水族館は見たことがありません。
大人気の水族館は、見物人がいっぱいで、イモの子洗うようです。
黄色い帽子に黄色い服の小さい人が、それはそれは大勢見に来ています。
転んじゃうから、押さないでね~、
ほら言わんこっちゃない、転んでいる子がいますよ。
危ないからね、転んだらすぐ起きてね。
ゆっくり楽しんでみていってください。
そして、お帰りは魚のしっぽからどうぞ。
ダイナミックな水族館を絵巻絵本で再現
この絵本は製本も普通じゃありません。
表紙にも、絵本ではなく「絵巻絵本」と書いてあります。
上の写真をご覧ください。
1ページ目から最後のページまで、絵巻物のようにページがつながっているんです。
一応、表紙に合わせて決まった大きさに折ってありますから、めくってみることもできます。
そして、折り目を全部のばすこともできるんですよ。
のばしてみると1枚のながーい紙です。
計ってみたら
253㎜×11頁=2,783㎜
あと30センチで3メートルでした。
ぜひ、お家で端から端までひろげて、水族館をじっくり見てください。
どこかで見たことあるようなおじさんに似た魚や、おばさんに似た魚もいるかも。
黄色い服を着て水族館にやってきた小さい人の中には、きっとあなたもいるはず。
同じように見えてまったく同じ人はいません。
同じように見えるけど、同じ模様の魚もいません。
みんなどこかがちょっと違っていて、それを見つけるのが面白くてやめられません。
最後まで見たらまた最初から見に行きたくなりますよ!
水族館は、ちょっと暗くて、水そうのガラスと水がユラユラして、じっと見ているとなんだか夢を見ているような気がしてきます。
なかの生きものが、なにか言っているように思えて、びっくりするときがあります。
それから「マンジュウイシモチ」とか「チカメキントキ」とか「スミツキトノサマダイ」とか、ヘンテコな名前の魚がいたりします。
なかには「オジサン」という名前の魚がいて、わたしはびっくりして腰をぬかしてしまいました。
(中略)
びっくりして、それから面白いなあと思ったり、不思議だなあとか、すごいなあと思ったりします。わたしは、いろいろな水族館を見ているうちに、もっともっとびっくりして、面白くて不思議で、すごい水族館をつくろう、と思うようになりました。それから三十年(ほんとうは一年くらい)、ついにできたのがこの『びっくり水族館』であります。
作者のことばより引用
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