記憶屋
織守きょうや(おりがみきょうや)著
角川ホラー文庫
映画の原作本は、たいてい公開前に読んでいます。
この小説も主演・山田涼介、ヒロイン・芳根京子、で映画化されました。
第22回日本ホラー小説大賞で「読者賞」を受賞したヒット小説、いったいどんなストーリーなのか興味深々で読みました。
記憶屋は都市伝説? それとも実在するの?
大学生の遼一は、大学の先輩杏子に好意を寄せ、仲良くなっていく。
ところがある日を境に、杏子との連絡が途絶え、会えなくなる。
どうしても杏子を見つけ出し、ある話をしたい遼一は、彼女とかわした会話の内容を手掛かりに、思いつく場所を探し回る。
そして、ようやく杏子の姿を見つけるのだが、彼女は遼一を見て
「どなたですか?」
と不思議そうにたずねた。
杏子は、以前と同じように大学に通い、友だち関係も変わったところがなかったのに、遼一の記憶だけが失われてしまっていたのだ。
いったい何が起こったのか?
この世には、人の記憶を食べて消すことができる力を持つ「記憶屋」がいるという。
都市伝説だと思っていた記憶屋が、杏子の変化によって「実在するのではないか」との思いを強くする遼一。
遼一は記憶屋に記憶を消されたと疑われる人物や、記憶屋に会ったという人物を調べ始める。
何のために記憶屋を追いかけているのか。
その理由は、少しずつ明かされていく。
本当に記憶屋はいるのか?
軽いタッチで読みやすい
消してしまいたいようなできごとが記憶のそこにあっても、人は時間とともにを乗り越えていく力を持っている。
記憶をすぐに消し去ることはできないけれど。
でも、もしどうしても乗り越えられないような記憶を消してくれる人がいるとしたら?
記憶屋と記憶を消された人の日常が描かれている。
記憶屋が誰かという犯人さがしの話ではなく、誰もが持っている記憶に焦点をあて、
もし、消したい記憶だけが消せるとしたら?
という発想はユニークでおもしろい。
全体を通して、文章は軽いタッチでさーっと流れるように読みやすかった。
これはホラー小説?
消してしまいたい記憶を、記憶屋に消してもらうことができた人はこれから先どうなるのだろう?
こんな記憶、消したい!と思った人が、本当にその記憶を失い、悲しみを失い、辛さを失い、心の痛みを失ってしまった時、どうなるのか?
記憶屋によって、そんな人がたくさん生まれてしまうことになったら、この世界はどうなるんだろう?
辛い、悲しい、苦しい、そんな体験があるから、そこへは戻りたくないと頑張る力が生まれる、あんな思いはしたくないと強くなろうとする、同じような目にあっている人に手を差し伸べようとする。
そうした負の経験を記憶の中から消してしまったら、負の状況を乗り越える力はどこから生まれてくるんだろう?
想像するだけで恐ろしい。
そんな世界が生まれることを想像すれば、これがホラー小説というジャンルになるのかもしれない。
物足りなさが残りました
映画の原作になった小説、ということで読んでみた。
始めは面白そうだなぁと思ったのだけれど、途中から先が見えてしまった。
登場人物の設定や状況が、あいまいに感じる部分もあって、
まあ、フィクションならいいのかなぁ、と思ったが。
この先はこうなるのかなあ、と読み進めると、思った通りの結末が用意されていて、あれ、これでいいの? 拍子抜けした感あり。
もうひとひねりほしかった。
え?じつはそうだったのか!
みたいなどんでん返しがほしかった。
映画ではどのように作られているのか、興味はあるけど。
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