自然の雄大さを、目と耳で感じられる絵本を3冊紹介します。
タイトルは『森の絵本』『空の絵本』『水の絵本』。
作者は3作とも長田弘さんと荒井良二さんです。
長田弘さんは読売新聞で(2015年まで)こどもの詩の選者としてもお馴染みの方。
荒井良二さんは『スキマの国のポルタ』シリーズをはじめ、絵本、アニメーション、音楽活動など幅広い芸術活動を繰り広げている方。
誰にでもわかるやさしい言葉は、歌うようにリズミカルで軽快。
ハッとするような明るい光、暗く深い森、時に繊細でまたある時は力強い筆づかいで描かれた絵。
森の木々や草花、広い空から降ってくる雨粒、奥のその奥から届く明るい光を散りばめたな星空など、自然の姿が生き生きと描かれています。
森の絵本
扉を開くと、しんと静まり返った森の奥から読者に呼びかける声が聞こえてきます。
その声に導かれてどんどん森の奥深くへ誘われるような感覚。
森に入ったことがある人なら、きっと思い出します。
あ、わかる!わかる!その感じ!と。
きっと同じような感覚を体験したことがあるはず。
森に入ったことがない、森を知らない人は、その絵の中から森の中にある不思議な力を知ることができます。
いったい森の奥には何があるのでしょう。
何を感じることができるのでしょう。
「きみのだいじなものをさがしにゆこう」
森の奥から姿の見えない声が語りかけてきます。
ハッとするようなあざやかな色が目に飛び込んできます。
その声がおしえてくれるだいじなもの、その絵が見せてくれる美しいもの、それらはずっと昔からそこにあるかけがえのないものなんだと感じる心を忘れてはいけないなぁ
と思いました。
空の絵本
森の中にいると…
青空が雲に覆われ雨が降り出す。
雨はだんだん強くなり、風が吹き荒れる。
稲妻がひかり、雷がとどろく。
そしてだんだん雷が遠のき、雨が弱く、空が明るくなっていく。
雨あがりのしずくはキラキラと輝き、自然界にはこんなに美しいものがあることを教えてくれる。
山々のかたちがくっきりとうかぶ夕方の空は白く青く赤い。
数えきれない光の粒のような星、大きな丸い月
こんな小さな絵本の中に、どこまでも続く広い空を感じることができる絵本です。
水の絵本
森の中の一軒家から出てきた父と子、それを見送る母親が手を上げている姿が見えます。
父と子は川岸から船に乗って行く。
その途中、みずってどんなもの?
子どもが尋ねたのかもしれません。
どんなものよりすきとおっていて
どんないろにもなれるもの
かげをうつしてながれてゆくもの
すいそとさんそだけでできているもの
ほかにも父はたくさんの答えを持っています。
そしてさいごに用意したとっておきの答え、
一度聞いたら忘れないすごい言葉!ぜひご自分で読んでみてください。
朝から川に行き、この言葉にたどり着いた時にはもう夜でした。
船を下り、父と子が歩く先には赤い家が見えています。
まる1日をかけて水を見て、触って、感じた子どもは、最後に父から思いもよらぬ答えを聞いて、きっと笑いながら家路についたに違いありません。
わたしも笑ってしまいました。
この3冊は全く違う視点、画風で描かれていますが、どれも自然の雄大さにあふれています。
3冊に共通しているのは、だれにでもわかるやさしい言葉と、テンポよく流れるようなリズム感のある詩です。
じっくり眺めているうちに、奥へ奥へと吸い込まれてしまいそうな力強い絵。
強弱、明暗が効果的に使われていて、暗い絵の次に用意されているハッと目を見張る色あざやかなまぶしい場面に、わあ!!っと声をあげてしまいます。
強いエネルギーを感じる絵本です。
自然を感じたくなったら、ぜひ手に取ってみてください。大人も子どもも楽しめること間違いなしです。
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