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【課題図書を読む】化石のよぶ声がきこえる~天才恐竜ハンター ウェンディ・スロボーダの感想など 

化石のよぶ声がきこえる
作・へレイン・ベッカー
絵・サンドラ・デュメイ
訳・監修 木村 由莉
くもん出版

ウェンディケラトプスという恐竜をご存知ですか?
ウェンディケラトプスは、白亜紀後期のカナダに生息していた角竜類に属する恐竜です。
ウェンディケラトプスという名前は「ウェンディの角の顔」という意味。
ウェンディっていったい誰でしょう?
それは、この恐竜の骨を発見した恐竜ハンター、ウェンディ・スロボーダ(Wendy Sloboda)博士のことです。
これから紹介する本をよめば、ウェンディ・スロボーダがどんな人で、どのようにして恐竜の化石を発見したのかがよくわかりますよ。

ストーリー

ウェンディ・スロボーダはカナダのアルバータ州に住んでいました。
川や湖、山脈、草原、氷河など、様々な地形に恵まれたところで、州内には、ユネスコ世界遺産にも登録されている国立公園もある、そんな場所です。
豊かな自然に囲まれて育ったウェンディ。
彼女はいつも学校の授業が終わると、外へ駆け出していきます。
丘をのぼり、山道をかけぬけてお宝を探しに行くのです。
おもしろい形の石や花のつぼみ、ひっつきむしにアオカケスの羽など、ほかの人が見れば「どうしてこれがそんなにおもしろいの?」と感じるものも、彼女にとってはとても魅力的な宝物だったのです。

彼女が12歳のときのことです。
ウェンディは珍しいサンゴのかけらを見つけました。
それは、今から何千万年も前のサンゴの化石だったのです。
また、17歳のときには恐竜のたまごの化石をみつけました。
その発見はヒパクロサウルスという恐竜の成長過程を知る手がかりとなったのです。


バッドランドのデビルズ・クーリー、岩だらけの谷が広がる場所が彼女のお気に入りです。
その場所では、ほかの誰もが見のがしてしまうものを、彼女だけは見つけることができたのです。
ウェンディは、化石のクリーニング技術を学び、ロイヤル・ティレル古生物博物館で働くようになります。そして、宝探しのフィールドを世界に広げ、アルゼンチン、グリーンランド、モンゴルなど各地に化石の発掘に出かけ、「化石のよぶ声が聞こえる人」と呼ばれるようになりました。

そして、ついに新種の恐竜の骨を発見します。
その恐竜は発見者のウェンディの名前をとって「ウェンディ」ケラトプスと名付けられたのです。

女の子だって恐竜が好き!

幼いころから石や植物、自然が作り出した不思議な形をしたもの大好きで、みんなが気づかないものを見つける天才だったウェンディ。
彼女はその「好き」なことにずっと情熱をかたむけ、好奇心はとどまるところを知りません。
そんな彼女の生き方は、とてもワイルドでかっこいい!
日本では、恐竜は男の子が好きなモノ、というイメージがもたれがちですが、ウェンディのような女性の化石ハンターは、恐竜好きの女子にとってあこがれの存在ですね。


さらに、本書の最後には佐藤たまき氏(日本の古生物学者。専門は古生物学。首長竜の化石研究分野の日本に於ける開拓者)と木村由莉氏(国立科学博物館 地学研究部 生命進化史研究グループ研究員)による対談「好きをしごとにするってどういうこと?」が掲載されています。
恐竜大好き少女だったお二人。
彼女たちが紆余曲折を経て、大好きな恐竜にかかわる現在の仕事につくまでの道のりを知ることができます。

感想

化石ハンターの絵本を読んだのは『バーナムの骨』に次いで2冊目でした。
『バーナムの骨』はTRex(ティラノサウルス)の化石を発見したバーナム・ブラウンを題材にした作品で、こちらもわくわくしながら読みました。

【絵本】ティラノサウルスの化石を探し当てた化石ハンターの物語 - HANAのおと
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ウェンディとバーナム、二人の共通点は、同じ場所にいるのに、ほかの人が見つけられないものを本人たちだけが見つけられる、こと。
彼らが化石ハンターと呼ばれる理由はそこにあるのですが、実に不思議です。
彼らの化石探しへの情熱がそこにいる誰よりも強く深いものだったからこそ、恐竜たちの声を感じることができたのかもしれませんね。

バーナムはすでに亡くなっていますが、ウェンディは今も現役です。
「好き」なものを仕事にするには、好きだけではおさまらないこともあります。
たとえば、砂漠の中で何日も滞在して、砂にまみれながら根気よく続けなければいけない作業。
発掘作業が成功するか失敗するか、結果が大きくのしかかってくるかもしれません。
世界中で発掘するとなれば、言葉や文化の壁も立ちはだかることもるでしょう。
規模が大きくなれば、何年もかかる作業となりますから、たくさんの人の協力も必要になります。
ふらりと自分のお気に入りの場所に出かけて行って、化石を見つけてくるような気楽な作業ではなくなってしまいます。
でも、そうした問題を乗り越えた先に見えた大きな発見は、ウェンディにとって何物にも代えがたい喜びだったのでしょう。
彼女の腕に刻まれた恐竜の入れ墨から、どれほど恐竜が好きか、ウェンディケラトプスの発見がどんなにうれしかったか、が伝わってきます。
一生をかけて「好き」を追い続けている彼女は、とても輝いていて、素敵です。
ほかの人と同じ、じゃなくていいんだよ、
自分の大好きなことを追いかけていれば、その先にステキなことがあるよ
彼女の生き方からそんなメッセージを受け取りました。

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著者・訳者紹介

●へレイン・ベッカー
児童書・ヤングアダルト作家。オンタリオ州トロント在住。『スパイ図鑑』(ブロンズ新社)、『That’s No Dino! No Dino!』『Counting on Katherine』『Emmy Noether』(いずれも未邦訳)など90冊以上のベストセラーがあり、自然科学分野を中心に女性の伝記絵本を多く手がける。

●サンドラデュメイ
絵本作家、イラストレーター。ケベック州モントリオール在住。卓越した色彩と質感の表現に定評があり、数々の受賞歴がある。代表作に『Olivia Wrapped in Vines』『Farm Crimes』シリーズ(いずれも未邦訳)などがある。


●木村由莉
国立科学博物館地学研究部研究員。早稲田大学教育学部卒業後、米国サザンメソジスト大学地球科学科で博士号を取得。陸棲哺乳類化石を専門とし、小さな哺乳類の進化史と古生態の研究を行う。著書に『もがいて、もがいて、古生物学者!』『化石の復元、承ります。古生物復元師たちのおしごと』(ともにブックマン社)など。

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