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【課題図書を読む】アップステージ~シャイな私が舞台に立つまで の感想など

『アップステージ シャイな私が舞台に立つまで』
ダイアナ・ハーモン・アシャー 作
武富博子 訳
評論社

12歳のシーラは歌も踊りも大好き、でもとっても恥ずかしがり屋。
毎年開催される学校のミュージカルに出たい気持ちはあるけれど、たくさんの人の前に立つのは…
そんな彼女の背中を押してくれた友人や、ミュージカルを作り上げる中で知り合った仲間たちとの物語は、まるでそれ自体がミュージカルのよう。

笑いあり、涙あり、そして淡い恋にドキドキする場面も。
今、中学生のあなたも、
かつて中学生だったあなたも、
シーラと仲間たちのステージに、大きな拍手を送りたくなりますよ。

ストーリー

主人公のシーラは、両親と妹の4人家族。
歌もダンスも大好きだけど、とてもシャイな12歳です(正確には12年と半年)。
物語は、シーラが友だちのキャシーに誘われて、学校のミュージカルのオーディションに挑戦するところから始まります。
ミュージカルの演目は『ザ・ミュージック・マン』。
ブロードウェイで大ヒットしたこの作品は、何度も上演され、映画にもなるほどの人気で、誰もが知っている作品です。

オーディションは、先生のピアノ伴奏でみんなの前で一人で歌います。

それは、恥ずかしがり屋のシーラにとっては、逃げ出したくなるような試練の場所。
でも、その難関を克服したシーラ。
音楽の先生は、オーディションで歌うシーラを見て、シーラの実力を見抜きます。
そして彼女に、通常の役のほかにもう一つ大切な役を任せることにしたのです。

オーディションが終わり、配役の発表、そして練習が始まります。
シーラは劇中に登場するカルテット(四重唱)のメンバーの一人に、友人のキャシーは村人の一人に選ばれました。
それまで話したこともなかった人たちといっしょに、歌ったり演技の練習をする中で、彼らの中に思いやり、友情、あるいは憧れや妬みなど、いろんな感情が芽生えます。
そして思わぬ「事件」が起こり、事件解決のために仲間が奔走したり。

最初はぎこちなかった関係が、ミュージカルの練習を通して、お互いを知り、たくさん言葉を交わしていく中で、どんどん変化していきます。

まるで、青春ドラマの一コマを見ているようなすがすがしさを感じます。

そして、ミュージカルの発表の当日を迎えます。
果たしてミュージカルは成功するのでしょうか?!
舞台上であるハプニングが起こり、シーラが大活躍する場面も見どころです。

ザ・ミュージックマンのこと

彼らが演じるミュージカル「ザ・ミュージック・マン」は、1957年にブロードウェイで初上演され、大ヒットした作品。
音楽は第1回グラミー賞最優秀ミュージカル・シアター・アルバム賞を受賞。
その後もリバイバル上演されたり、学生演劇でも人気の作品で、映画化やテレビ映画化もされ、日本でも上演されるほど有名な作品です。

ストーリーの舞台はアイオワ州のリバーシティという田舎町。
巡回セールスマンのチャーリーは自分を「ハロルド・ヒル教授」と名乗って、行く先々で少年マーチングバンドを結成する、と約束し、町の人から楽器とユニホームの代金を受け取ると、その町から消えてしまうペテン師。
チャーリーは今回もまた、リバーシテの人々をだまして、マーチングバンドを結成させる話をとりつけ、金を手に入れます。
そんなチャーリーが、町の古い図書館の司書でピアノ教師のマリアンと恋に落ち、マリアンはチャーリーの正体を知ることに。正体がばれたチャーリーはどうなるかというと…
結末は、見てのお楽しみにしておきます。

私は『アップステージ』読む前に、ちょうど日本で上演されたこの舞台を見ていました。
とても素敵な、楽しい舞台でした。
で、そのあと、偶然にもこの『アップステージ』の中でザ・ミュージック・マンが取り上げられていることを知り、これは読まなくては、と手に取った次第です。
『アップステージ』に出てくるミュージカルの場面や歌は、本物のミュージカルの舞台で歌われている歌そのものが使われています。
ですから、シーラたちが練習している歌も、それぞれの場面も、実にリアルに目に浮かび、より深くこのストーリーを味わうことができました。

シーラのお気に入りの歌は、とても素敵な歌ですよ。

感想

この作品を読みながら、自分も中学生時代の文化祭で『高瀬舟』の劇を発表したことを思い出しました。
演者、小道具、大道具、音楽、照明、衣装、時代考証などクラスみんなで担当し作り上げた舞台。
やはり、最初はみんなぎこちなかったりやる気がなかったりで、本当にできるのだろうか?と不安がよぎりました。
それがみんなの気持ちがだんだん一つにまとまって、舞台発表の幕が下りたときには、全員がステージに飛び出してきて「ヤッター」。
みんなで作り上げたぞ、やり切ったぞ、という気持ちで泣き笑いが止まらず、最高に盛り上がりました。
久しぶりにあの頃の自分に会えた、そんな楽しい作品になりました。

著者・訳者紹介

●ダイアナ・ハーモン・アシャー

アメリカの作家。イェール大学で英語と英文学を学ぶ。卒業後は出版社と映画会社に勤務。現在はニューヨーク在住で、執筆のほか、子どもたちの読書支援や創作教室の活動をしている。デビュー作は『サイド・トラックー走るのニガテなぼくのランニング日記―』。

●武富博子

東京生まれ。メルボルンとニューヨークで幼少期を過ごす。上智大学法学部国際関係法学科卒。おもな訳書に「動物探偵ミア」シリーズ、「魔法ねこベルベット」シリーズ、『ハロー、ここにいるよ』『闇のダイヤモンド』『スマートーキーラン・ウッズの事件簿―』『サイド・トラックー走るのニガテなぼくのランニング日記―』などがある。

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